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【財務コラム#3】ご存知ですか?コロナ融資の借換え・条件変更の方法

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財務ブログ#3『ご存知ですか?コロナ融資の借換え・条件変更の方法』

 

【1. はじめに】

今回はコロナ融資の借換えや条件変更についてご紹介します。

新型コロナウイルスがようやく5類認定となり「アフターコロナの時代」に突入しました。

 

多くの中小企業・個人事業主の方は、いわゆる「コロナ融資」の借入をなされたかと思います。

そして、元金据置期間が終わりになって、ついに返済が開始となる方も多いのではないでしょうか?

 

借入れた当初は、「利息も保証料も補給されるから、元金据置を3年にして、据置期間が終わったら一括返済してしまおう」という作戦を立てられていた方もいらっしゃるかと思います。

 

しかし、いざ3年たってみてどうでしょうか?

     「月次単位で、返済できるだけのキャッシュを生み出すのが難しい。」

     「物価高騰の影響が大きくて、コロナ融資で借入れたお金に手をつけてしまった。一括返済するのが難しい。」

     「コロナ融資を一括返済できるけれど、一括返済してしまうとキャッシュが薄くなる。返済した後に資金不足に陥らないか不安」

 

このような状況に陥っていませんか?

国や新潟県では、引き続き厳しい状況にある事業者様を支援するための制度があります。

 

まとめてご紹介しますので、ぜひ活用を検討ください。

 

【2. コロナ融資のおさらい】

混同しやすいのですが、コロナ融資(ゼロゼロ融資)と一口に言っても種類が3つあります。

後の話にも関わってきますので、一度整理しましょう。

「誰から借りるか」によって、制度の種類が異なってくるのがポイントです。

 

① 新型コロナウイルス感染症対応資金(民間金融機関)

② 新型コロナウイルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫)

③ 新型コロナ感染症特別貸付(商工組合中央金庫)

 

「① 新型コロナウイルス感染症対応資金」は県の制度融資となります。

信用保証協会融資となりますので、本来信用保証料がかかります。

ただ、同制度では利息のみならず保証料分も県から補給されたので、借りる側からしたら金銭的コストがかからないのが特徴でした。

 

①のみ借入れしている方もいれば、①と②の2種類を借入している方など状況は様々かと思います。

 

いずれの制度も、元金据置が5年間まで設定でき、利子補給は3年でした。

 

【3. 新潟県より民間ゼロゼロ融資の条件変更制度が発表されました】

2023年3月31日に新潟県から、「民間ゼロゼロ融資」の条件変更の仕組みが発表されました。

今回の発表では、返済期間および返済据置期間が当初の制度より延長されました。

変更内容については下表の通りです。

 

変更前

変更後

償還期間

10年以内

15年以内

据置期間

5年以内

7年以内

 

これにより、例えば当初の借入から元金据置期間を長くすることで、返済開始を遅らせることができます。

 

「事業を立て直すまでもう少し時間がかかる」という方にとっては、活用してみるのも手かと思います。

ただ、変更に伴って追加で信用保証料が発生する場合もありますのでご了承ください。

 

こちらの条件変更を活用したい方は、ご融資を受けた金融機関さんに相談して下さい。

 

なお、この仕組みは、あくまで民間ゼロゼロ融資のみ対象になることが注意点です。

具体的には、上述の「① 新型コロナウイルス感染症対応資金」の制度のみが対象となります。

ですので、日本政策金融公庫さんや商工組合中央金庫さんの借入は対象となりません。

ご注意下さい。

 

 

【4. コロナ融資の借換に利用できる保証制度のご案内】

つづいて、コロナ融資とは別の融資制度を紹介いたします。

 

     新型感染症・物価高騰等対策伴走支援型資金(新潟県制度)

 

融資条件は下表のとおりです。

融資限度額

1億円

資金使途

運転資金、設備資金、借換資金

融資期間

10年以内(うち据置期間5年以内)

融資利率

1.15%~(融資期間に応じて変動)

信用保証料

0~0.92%(セーフティネット保証の認定を受けた場合は保証料ゼロ)

 

こちらの制度融資は、コロナ融資に限らず、他の保証協会付融資も含めて「借換え」が可能です。

昨年から「融資の借換え」に使える融資制度が続々登場してきています(似たような名前・内容の制度が多く混乱してしまいますね)。

なおかつ、状況に応じて真水資金の調達もできる制度となっています。

 

コロナ禍を経て経済環境が大きく変わり、損益構造がコロナ前と大きく変化した事業者さんもいらっしゃるかと思います。

そういった方はぜひ借換えを検討してみてはいかがでしょうか。

現在の状況にあわせた適切な返済条件に組み直してあげることで、資金繰り不安が解消され、本業に専念できることかと思います。

 

この制度では、「融資の対象になるか」を判定する要件が様々あります。

ここではかいつまんで記載します(いずれかを満たせば大丈夫です)。

     セーフティネット4号の認定を受けていること

     セーフティネット5号の認定を受けていること

     最近1ヶ月の売上が対前年比▲5%以上

     最近1ヶ月の粗利率が対前年比▲5%以上

     最近1ヶ月の売上高営業利益率が対前年比▲5%以上

     直近決算の粗利率が対前年比▲5%以上

     直近決算の売上高営業利益率が対前年比▲5%以上

売上減少だけでなく、粗利率や売上高営業利益率の減少でも対象となります。

なおかつ、直近決算とその前年の決算での比較もできます。

対象の要件は広く設定されていますので、調査すればどこかで要件に当てはまるかと思います。

 

少し発展的な内容ですが、信用保証協会付融資については、「保証枠」という考え方があります。

保証枠は「一般保証枠」「セーフティネット保証枠」「危機関連保証枠」の3種類があります。

それぞれ枠の上限が設けられていますので、借換えを行う際は、戦略的に「どの枠を使うのか」という考え方も重要です。

例えば、コロナ融資を「危機関連保証枠」で借入している場合、借換えることで「一般保証枠」になるとしたら、借換えを行わない方が良い場合(あるいはできない場合)もあります。

 

借換えの融資制度は、今後も制度が継続されるかと思います。

「自社の適切な借入状況を把握し、積極的に借換えを行う」ことは、経営戦略としての重要性がますます高まることかと思います。

これを機に、是非とも自社にとって適切な返済条件を考えてみましょう。

 

【5. 日本政策金融公庫のコロナ融資の条件変更について】

 

これまで、民間金融機関のコロナ融資についてご説明させていただきました。

一方で、政府系の金融機関についてはどのような対応ができるのでしょうか。

 

政府系金融機関である日本政策金融公庫さんや商工中金さんについても、上述した「コロナ融資の条件変更」の制度があります。

 

ただ、政府系金融機関は民間金融機関の「補完銀行」という立場です。

民間金融機関の取組み姿勢に沿った形でのご支援が前提となることに注意しましょう。

 

具体的には、弊社でご支援させていただいた事例として、公庫さんと民間金融機関さんの両方からコロナ融資を借入している事業者様がいらっしゃいました。

コロナ融資の返済が開始となりますが、元金据置期間を延長したいというご要望です。

このときは、公庫さんでは条件変更、民間金融機関さんでは上述の元金据置制度のある借換えを同時に行いました。

結果、無事に元金据置期間が延長されました。

 

このように、政府系金融機関さんからも条件変更を行ってもらうことも場合によってはできそうです。

もちろん、実際に条件変更できるかはケースバイケースにはなってしまうかと思いますが、一度ご相談してみるのも良いかと思います。

 

【6. おわりに】

コロナ融資返済開始は多くの事業者様にとって、大きな課題かと思います。

今回のコラムで少しでもお役に立てれば幸いです。

 

特に既存融資の「借換え」は今後、経営戦略上非常に重要になってくるかと思います。

ぜひとも現在の返済能力を一度分析して、ご検討いただくのが良いかと思います。

 

また、財務が良好な事業者様でしたら、借換えの制度融資を使わずともプロパー融資への切り替えも視野に入れるのが望ましいかと思います。

 

経営環境が目まぐるしく変化する現代ですので、資金繰りのお悩みは尽きないかと思われます。

だからこそ、金融機関さんとの関係を良好に保つこと、自社の資金繰り状況を常に把握することの意義は大きいかと思います。

 

弊社においては、お客様の財務体質を改善し、資金繰りの安定をお手伝いするサービスも提供しております。

 

もし資金繰りについてお悩みでしたら、ご相談を承らせていただきますので、ぜひとも弊社までお問合せ下さい。

 

問合せ先:つばさ税理士法人 経営支援室(TEL:0256-61-5810)

問合せフォーム:こちらから

【財務コラム#2】利益を上げるために必要な売上高、あなたは答えることができますか?~損益分岐点分析の活用方法解説~

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財務ブログ#2『 利益を上げるために必要な売上高、あなたは答えることができますか?

~損益分岐点分析の活用方法解説~

 

【1. はじめに】

今回は管理会計の入り口として「損益分岐点分析」についてご紹介します。

簡易的な分析手法ですが、様々なシチュエ―ションで経営判断に役立てることができます。

 

     いくら売上をつくれば利益が出るのか

     新商品(新サービス)を打ち出すにあたって、収益化できる販売数量を調べたい

     従業員を1名雇ったときに利益は出るのか

上はあくまで損益分岐点分析でできることの一例です。

様々な「もし」に対して、会社の収益がどのように変化するかシュミレーションできるのが、良い点です。

 

また、金融機関に自社の損益構造や収支計画を説明するのにも役立ちます(日商簿記2級や中小企業診断士試験など財務・会計分野の試験範囲になります。金融機関さんにとっても馴染みがあるかと思います)。

 

これを機にぜひともご自身の経営判断に役立ててもらえれば幸いです。

 

【2. 損益分岐点分析とは】

損益分岐点分析を一言で説明すると、「企業が利益を上げるために必要な、最低の売上高を計算する分析手法」です。

損益構造を分解して整理し、利益が0円になる(損益の分岐となる)売上高を計算します。

 

余談ですが、「CVP分析」という呼び方もされています。

     C:Cost(費用)

     V:Volume(数量)

     P:Profit(利益)

の頭文字をとってCVP分析だそうです。

なぜ、このような呼ばれ方をしているかは、図解して考えるとよりわかり易いかもしれません。

図では、縦軸に金額、横軸に数量を取ります。

図には、「売上」と「費用」の2種類のグラフが書かれています。

売上の傾きは「販売単価」、費用の傾きは「製品1個当たり変動費」を示します。

図の青色の矢印が利益を示し、赤色の矢印は損失を示します。

 

図からわかるように、販売数量が少ないうちは損失が発生します。

しかし、販売数量がある一定以上を超えると利益が発生します。

グラフ上の「売上」と「費用」の交点においては、利益も損失も発生しない「損益の分かれ目」となります。

これが「損益分岐点」となります。

 

実際の損益分岐点分析は、以下の4ステップで行います。

① 各費用を固定費と変動費に区分(固変分解)

② 変動費率の算出

③ 固定費の集計

④ 計算式により、損益分岐点売上高を算出

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ {1 - (変動費 ÷ 売上高)}

 

詳細については後述しますが、決算書をご用意いただき、各勘科目でどのような費用が計上されているか把握していればすぐにでも計算できてしまいます。

 

また、損益分岐点売上高を販売単価で割り算して、損益分岐点販売数量を算出できます。

これを活用することで、例えば「販売単価を10%増加させたときに、同じだけの数量を販売できたとしたら、どの位利益が出るのか」といったことを調べることができます。

 

最近は、価格高騰とコロナ融資返済開始が相まって、資金繰りに不安を抱えている方も多くいらっしゃるかと思います。

そのような方向けに別のコラムで具体的なシュミレーション方法を紹介しています。

ご興味ありましたらご覧になってください。

 

このように、損益分岐点分析は様々な場面で活用できる分析手法です。

次から具体的な分析の活用方法について紹介します。

 

【3. 損益分岐点分析の経営判断への活用方法】

ここでは損益分岐点分析の基礎的な活用方法を5つ紹介いたします。

① 売上目標の設定

② 新商品(サービス)の開発・事業化構想

③ 価格設定の見直し

④ 費用削減案の検討

⑤ 投資プロジェクトの評価

 

① 売上目標の設定

「来年は○○円の営業利益を達成する!」という目標を立てられる方は多いかと思います。

営業利益目標を達成するための売上高はどのように設定されていますか?

 

売上高に対する営業利益の比率(売上高営業利益率)を指標にして、売上目標を立てられている方も多いかと思います。

非常にシンプルで良いのですが、この手法には落とし穴があります。

それは、「生産性を向上させるor売上を伸ばすことで、利益率が指数関数的に改善する」ことを加味していないことです。

 

損益分岐点分析では、費用を変動費と固定費に分けて考えることで、利益率の改善も反映することができます。

売上高利益率を設定する手法を用いるとしても、後述する「変動損益計算書」を基に利益率を設定することが望ましいです。

そのほうが、経営者様や従業員様の頑張りをより正確に数値に反映することができるからです。

 

② 新商品(サービス)の開発・事業化構想

損益分岐点分析は、新商品や新サービスの開発・事業化構想の場面でも役に立ちます。

 

新商品を打ち出すにあたって、「価格をいくらにするか」は非常に重要な意思決定かと思います。

故稲盛和夫氏が「値決めは経営」とおっしゃっていたことも有名な話かと思います。

マーケティングの分野においても価格戦略は重要視されていることかと思います。

「高すぎては買ってもらえないし、安すぎては収益が出ない」この難しい場面においても、損益分岐点分析は役に立ちます。

 

この場合ですと、単価設定別に損益分岐点販売数量を計算して、比較分析するのが有効かと思います。

損益分岐点販売数量は、計算した損益分岐点売上高を単価で割り算すると算出できます。

 

漠然と「金額」ではわかりづらいかと思いますので、「販売数量」の単位に置き換えて考えてみるわけです。

・「市場規模に対して、販売数量は適切か」

・「単価を上げることで、販売数量にどれほど影響が出そうか」

・「単価を上げることで、損益分岐点売上を超えやすくなるのではないか」

といったことを検討しながら価格設定を行うのも良いかと思います。

 

③ 価格設定の見直し

②と重なる部分が多いのですが、既存商品(サービス)の価格設定を見直す場面でも活用できます。

 

既存の事業でしたら、費用の予測が高い精度で行えるかと思います。

より経営判断の参考になってくれるかもしれません。

 

④ 費用削減案の検討

費用削減を考えた時に、「削減し易い費用」「削減しにくい費用」といった性質があるかと思います。

 

だからといって「削減し易い費用」の対応に集中するのはもしかしたら悪手かもしれません。

費用の削減を考えるときは、「削減し易さ」と「削減したときの効果」のバランスを考えるのが良いのではないでしょうか。

 

例えば、「外注の内製化」は「削減しにくい」けれど、「削減した時の効果が大きい」取組になるかもしれません。

「時間がかかってでも、手間が大きくても、着手した方が良いかもしれない」。

このようなことは他にも沢山あるかもしれません。

 

損益分岐点分析を活用することで、長期的に見て収益構造がどう変わるかをシュミレーションするのも良いのではないでしょうか。

 

⑤ 投資案の評価

投資案の評価を行う際にも、活用が見込めます。

 

「投資を行ったとき」と「投資を行わなかったとき」でどのように損益構造が変化するかは、視える化できると良いかもしれません。

 

この場合、投資を行うことで想定される影響を洗い出し、数値に置き換えてあげることで分析が可能です。

 

例えば、老朽設備の入れ替えは経営者の皆さんにとって怖い決断かと思います。

数値上でシュミレーションしてあげることで、より適切な判断ができるかもしれません。

 

【4. 損益分岐点分析の実施方法】

実際の損益分岐点分析は、以下の4ステップで行います。

① 各費用を固定費と変動費に区分(固変分解)

② 変動費率の算出

③ 固定費の集計

④ 計算式により、損益分岐点売上高を算出

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ {1 - (変動費 ÷ 売上高)}

 

以下は各ステップについて説明します。

 

① 各費用を固定費と変動費に区分(固変分解)

損益分岐点分析のポイントは、費用を「変動費」と「固定費」に分けて考えることです。

分析の第一段階として、各費用を変動費と固定費に分類しましょう。

 

変動費とは、売上の変動に応じて金額が変化する経費です(材料費や外注費、梱包費用など)。

固定費とは、売上が増加しても金額が変わらない経費です(家賃や人件費、水道光熱費など)。

 

費用を変動費と固定費に分けた後は、変動費・固定費をそれぞれ集計して特有の損益計算書を作成します(「変動損益計算書」と言われます)。

一般的な税務申告時の損益計算書とは異なりますが、損益構造を把握し易いので筆者も良く作成しています。

 

② 変動費率の算出

変動費率とは「売上高に対する変動費の割合」です。

計算式としては、「変動費÷売上高」で計算します。

 

③ 固定費の集計

固定費については金額を合計します。

 

④ 計算式により、損益分岐点売上高を算出

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ {1 - (変動費 ÷ 売上高)}

 

②と③をもとに損益分岐点売上高を計算します。

 

以上が損益分岐点分析の実施方法です。

上述の経営判断への活用を行うときは、応用を利かせる必要があります。

シュミレーション内容に応じて、変動費や固定費を調整する形となります。

 

【5. 損益分岐点分析の注意点】

応用が利いて様々な場面で役に立つ損益分岐点分析ですが、活用にあたって注意点がありますのでご紹介します。

 

① 単純化されたモデルである点

② 前提条件の正確性

③ 変動費用の性質

④ 市場環境の変化

⑤ あくまで分析の物差しの一つにしか過ぎない点

 

① 単純化されたモデルである点

損益分岐点分析は、費用や収益の関係を単純化したモデルです。

実際の経営状況や市場環境はより複雑ですので、分析結果はあくまで参考情報として扱うに留めましょう。

 

② 前提条件の正確性

損益分岐点分析は、様々な仮定や前提条件に基づいています。

したがって、分析の信頼性を高めるために、可能な限り正確なデータを使用するようにしましょう。

 

③ 変動費用の性質

損益分岐点分析では、変動費は売上高に比例して変動すると仮定しています。

しかし、実際のビジネスでは、販売量の変動によって、変動費用が変則的に増減する可能性もあるかと思います。

 

④ 市場環境の変化

損益分岐点分析では特定の市場環境を前提としています。

実際は、競争状況や需要の変動など市場は常に変化しています。

それらの変化が損益分岐点に影響を及ぼす影響も加味しましょう。

 

⑤ あくまで分析の物差しの一つにしか過ぎない点

損益分岐点分析は重要な指標ですが、経営判断においては他の要素や指標も総合的に考慮しましょう。

例えば、「利益率」や「キャッシュフロー」、「リスク管理」など、様々な視点から経営判断を行うことが大切かと思います。

 

【6. おわりに】

いかがだったでしょうか。

今回ご紹介しきれませんでしたが、損益分岐点分析の活用方法はまだまだ沢山あります。

 

筆者としては、このコラムを読んでいただいて、管理会計について少しでも興味を持ってもらえたら嬉しい限りです。

 

もし「損益分岐点分析や管理会計を駆使することで、より適切な経営判断をできるかもしれない」と思っていただけたら、弊社としてもお力になれることがあるかもしれません。

 

ご相談を承らせていただきますので、ぜひとも弊社までお問合せ下さい。

 

問合せ先:つばさ税理士法人 経営支援室(TEL:0256-61-5810)

問合せフォーム:こちらから

 

【財務コラム#1】物価高騰×コロナ融資返済で資金繰り悪化!損益分岐点分析のすすめ

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財務ブログ#1『物価高騰×コロナ融資返済で資金繰り悪化!損益分岐点分析のすすめ』

 

【1. はじめに】

・新潟県では電気料金が6月1日から24%値上がり。電気料金以外も軒並み値上がりでどうしたものか。

・販売価格の値上げを行ったものの、それ以上に原価や経費が上がってしまうのでは?

・コロナ融資の返済もついに始まってしまい、資金繰りの先行きが不安。

 

このようなお悩みを抱えている経営者様は多くいらっしゃるかと思います。

 

そんな皆様に今回は、簡易的に損益構造を把握するための分析手法、「損益分岐点分析」を紹介いたします!

 

あくまで簡易的な分析ですが、収益や資金繰りの見通しを立てるうえで便利な手法ですのでぜひご参考にして下さい。

 

【2. 価格高騰で損益構造が大崩れ?価格転嫁で本当にカバーできていますか!?】

ここ1年であらゆる価格が値上がりしてしまいました。

いくつかの品目について値上がり幅を調査してみると、影響の大きさがわかります。

     電気料金(東北電力):24%増(2023年6月から)

     鉄鋼:54.4%増(2020年比)

     レギュラーガソリン:34.7%増(2020年比)

     食料品全体:10.4%増(2020年比)

 

最近ですと「物価高倒産」といった言葉もよく叫ばれるようになりました。

帝国データバンクの調査によると、2023年4月30日現在で、「物価高倒産」の件数が全国累計で1,000件を突破したとのことです。

 

物価高対応のために、自社製品(サービス)の販売価格を値上げされた方も多くいらっしゃるかと思います。

ただ、本当に値上げ幅は適切だったのでしょうか?

 

物価高騰に歯止めが利かず、再度の値上げを検討している方も多そうです。

しかしながら、値上げによる受注減のリスクもありますし、そう簡単には値上げは決断できないと思います。

 

そうこうしているうちに、コロナ融資の返済がスタートしてしまいます。

さらに金利は上昇局面にありますので、今後の新規借り入れでは利息負担も重くなります。資金繰り環境は厳しさを増す一方です。

 

「このまま事業を継続して、本当に資金は工面できるのか?」不安に感じている方が沢山いらっしゃるかと思います。

 

今回は、少しでも皆様の不安が和らぐように、簡易的な手法ではありますが、資金が工面できるかシュミレーションする手法をご紹介いたします。

 

それが「損益分岐点分析」です。

 

【3. 「いくら売上があれば利益が出るか」を調べてませんか?】

 

「損益分岐点分析」という分析手法を聞いたことはありますでしょうか。

もしかしたら聞いたことはあっても、実際に経営判断に活用されている方は少ないかもしれません。

 

ここでは「損益分岐点分析」の概要について紹介します。

具体的な分析方法や、経営判断への活用方法については別のコラムで紹介いたします。

 

損益分岐点分析を一言で言うなら、「企業が利益を上げるために必要な、最低の売上高を計算する分析手法」です。

損益構造を分解して整理し、利益が0円になる(損益の分岐となる)売上高を計算します。

 

管理会計の入り口となる分析手法なのですが、意外と活用の幅が広いです。

今回のように、価格高騰という外部環境の変化による影響を調査することもできます。

 

分析は以下の4ステップで行います。

① 各費用を固定費と変動費に区分(固変分解)

② 変動費率の算出

③ 固定費の集計

④ 計算式により、損益分岐点売上高を算出

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ {1 - (変動費 ÷ 売上高比率)}

 

今回は価格高騰の影響をシュミレーションしますので、上述のステップ②または③で、各費用科目ごとに金額を補正しましょう。

(例えば、電気料金が24%上がるとしたら、水道光熱費勘定の金額を24%増やしましょう。)

 

以上の流れで計算された金額が「価格高騰を加味した、企業が利益を上げるために必要な、最低の売上高」となります。

 

「思ったよりも損益分岐点売上高の金額が大きい」と感じるかもしれません。

 

【4. コロナ融資がついに返済開始!返済できるだけの売上規模を把握されていますか!?】

 

これまでの内容で、「価格高騰を加味した、企業が利益を上げるために必要な、最低の売上高」については把握されたかと思います。

 

しかしながら、利益さえ出れば企業は継続できるわけではなく、借入を行っている場合は、借入の返済ができるほどのキャッシュを確保しなければなりません。

 

損益分岐点分析に一捻り加えてあげることで、「企業が借入を返済するために必要な、最低の売上高」を計算することができます。

 

処理としては、損益分岐点売上高の計算式の分子に「返済に必要な利益」を加算します。

返済に必要なキャッシュ(返済金額)を利益ベースに換算する必要があることに注意です。

簡易的な計算式は以下の通りです。

  返済に必要な利益 =(返済金額 - 減価償却費)÷(1-法人実行税率)

 

返済に必要な利益が算出できれば、以下の式で「企業が借入を返済するために必要な、最低の売上高」を計算できます。

返済するために必要な売上高 = (固定費 + 返済に必要な利益) ÷ {1 - (変動費 ÷ 売上高比率)}

 

想定以上に大きな売上を確保しないと、返済原資を工面できないのではないかと思います。

救済策として、新潟県信用保証協会の「伴走支援型特別保証制度」活用や条件変更も検討されるのがおすすめです。

詳細は別のコラムで紹介していますので、ご興味ある方はご覧になってください。

 

【5. おわりに】

 

今回は物価高騰やコロナ融資返済の影響により、資金繰りに不安を抱えている経営者の皆様に対して、少しでもお役に立てればと思って執筆させていただきました。

 

損益分岐点分析を活用することで、簡易的ではありますが資金繰りの目途が立ちやすくなると思います。

ご興味ある方は、別のコラムで詳細を紹介しております。

ぜひご覧ください。

 

また、資金繰りについてお悩みのある方は、ぜひ弊社までお問い合わせください。

 

問合せ先:つばさ税理士法人 経営支援室(TEL:0256-61-5810)